ゴリラ発言から読み解く「投影」の心理

ゴリラ発言から読み解く「投影」の心理

ゴリラ発言から読み解く「投影」の心理

学校

――家族にモヤっとしたとき、私たちは何を見ているのか――

冷凍庫からチャーハンを取り出した瞬間、

中身を盛大にぶちまけてしまいました。

どうやら封がきちんと閉まっていなかったようです。

「あーあ……」

一瞬がっくりしましたが、すぐに気を取り直しました。

「仕方ないよね。人間だもの。

こういうミス、誰にでもある」

そう自分に言い聞かせた、そのときでした。

横にいた4歳の息子が、ぽつりとひと言。

「パパは人間じゃないよ」

……え?

一瞬、時が止まります。

さらに追い討ちをかけるように、息子は続けました。

「パパはゴリラだから」

冷凍庫の前で、

チャーハンと一緒に、

私の“父親としての威厳”もパラパラと散らばった気がしました。


子どもが見ている親の姿は、思っているより自由

子どもが親を見る目って、本当に独特です。

私の中には

「父親とはこうあるべき」というイメージがあります。

でも、息子が見ている私は、

どうやらそれとはだいぶ違う存在のようでした。

この「ゴリラ扱い」を笑いながら片付けつつ、

ふと頭に浮かんだ言葉があります。

投影


心理学でいう「投影」とは

心理学でいう投影とは、

自分の中にあるイメージや感情を、
無意識のうちに相手に映し出してしまう心の働き
です。

息子にとって私は、

「大きい」「強そう」「ちょっと面白い」存在。

その感覚を、

彼なりの言葉で表現した結果が

「ゴリラ」だったのかもしれません。

ここで、ふと別のことに気づきました。

――これって、大人同士の関係でも起きているのではないか。


レトルトカレーをめぐる、もう一つのモヤモヤ

ある日の夕食。

仕事を終えて帰宅すると、

テーブルに並んでいたのはレトルトカレーでした。

そのときの私は、

「カレーは好きだし、レトルトの日があってもいいよね」

と頭では思っていました。

でも後日、妻がぽつりと、こんなことを話してくれました。

「実はあの日、ちょっとモヤっとしてたんだよね」

理由を聞いて、ハッとしました。

妻は、

楽をしたかったからレトルトにしたわけではなく、

その日は心も体も余裕がなかったそうです。

それでも、

  • 手抜きだと思われたらどうしよう

  • ちゃんとやってないって感じられたら嫌だな

そんな気持ちが、心の中に残っていたと言います。

私はその話を聞いて、

自分とはまったく違う場所で、

妻もまたモヤモヤを抱えていたことに気づきました。


それは「妻の問題」ではなく、私の投影だった

振り返ってみると、

私の中には無意識に

「夕食は手作りされているもの」

「家庭はきちんと回っているもの」

そんな“理想の家庭像”がありました。

そのイメージを、

知らず知らずのうちに妻に重ねていた。

だから、

現実がその通りでなかったとき、

言葉にならない違和感として心に残ったのだと思います。

本当は、

「今日はどんな一日だった?」

「疲れてたんじゃない?」

そんな一言をかけるだけで、

お互いのモヤモヤは、

ずっと小さくなっていたのかもしれません。


投影に気づくと、関係は少し楽になる

息子が私に

「ゴリラ像」を投影していたように、

私も妻に

「理想の妻像」「理想の家庭像」を投影していました。

でも、その理想は

現実というより、

自分の頭の中で育ったイメージだったのかもしれません。

投影に気づくと、

相手を責める気持ちが、少し緩みます。

「そう思っていたのは、私の中だったんだな」

そう気づけたとき、

家族との距離は、ほんの少し優しくなりました。


おわりに

家族にモヤっとしたとき。

期待が裏切られたように感じたとき。

その奥には、

自分が無意識に抱いていたイメージ

隠れていることがあります。

それに気づけたら、

相手を変えなくても、

関係は少しずつ楽になっていく。

冷凍庫の前で散らばったのは、

チャーハンだけではありませんでした。

私の中にあった

「こうあるべき」という思い込みも、

一緒にほどけていった出来事でした。